Japan M&A Gateway by CoDigital

日本で会社を買う

海外企業が日本で会社を買うには:実務プロセスの全体像

海外の買い手が日本企業を買収する際の実務プロセスを解説。買収条件の整理、ターゲットへのアプローチ、デューデリジェンス、交渉、クロージングまでを俯瞰します。

日本で会社を買収すること自体は、法制度上とりわけ難しいわけではありません。外国資本による日本企業の保有は原則として認められており、株式譲渡の手続きも法令上、明確に整備されています。難しさはその周辺にあります。公開されていない案件をどう見つけるか、オーナー経営者にどうアプローチするか、そして異なる期待値をどう収束させるか——ここに実務の重心があります。

本稿では、日本におけるクロスボーダー買収の一般的な流れを整理します。法務・税務上の助言ではなく、一般的な情報提供を目的としています。

1. 探し始める前に、買収条件を定義する

日本のオーナー経営者は、具体性のある相手に対して反応します。業種、売上規模、地域、想定する取引規模、そして関心を持った理由まで説明できる買い手と、漠然とした照会とでは、受け止められ方がまったく異なります。アプローチの前に、少なくとも次の点を整理しておくべきです。

  • 対象業種、および必要に応じてサブセクターや求める技術・機能
  • 売上・収益性のレンジ、経営への関与度
  • 地域(既存拠点、仕入先、顧客との近接性)
  • スキーム:全株式譲渡、過半数取得、事業譲渡のいずれか
  • 既存経営陣の残留を前提とするかどうか

2. 案件はどこにあるかを理解する

日本で実際に譲渡される企業のかなりの部分は、市場に公開されることがありません。後継者が不在のまま経営者が引退時期を迎えた企業が多く、公開的な売却よりも慎重なプロセスを望む傾向があります。こうした企業に到達するには、掲載案件を眺めるのではなく、独自ルートでのソーシング——直接のアプローチ、および地域の専門家・金融機関・会計事務所とのリレーション——が必要になります。

3. アプローチと初期評価

最初の接触の設計が結果を左右します。通常は仲介者を通じて行い、内容は簡潔に、価格ではなく「誰が」「なぜ関心を持っているか」に焦点を当てます。オーナーが対話に前向きであれば、秘密保持契約を締結したうえで段階的に情報を開示します。まず匿名の企業概要、次いで決算書と事業の概要という順序が一般的です。

4. バリュエーションと基本合意

日本で用いられる評価手法は国際的にも馴染みのあるものです。EBITDA や営業利益のマルチプル、DCF、純資産法などを、単独ではなく組み合わせて用いることが多くなります。オーナー系の中小企業では、修正純資産に正常収益力の一定倍数を加算する方式もよく見られます。レンジについて大枠の合意ができた段階で、法的拘束力を持たない意向表明書(LOI)にスキーム、想定価格、独占交渉期間、スケジュールを定めます。

5. デューデリジェンス

財務・税務・法務が基本で、必要に応じて環境や人事も対象になります。日本の案件で頻繁に論点となるのは次のような項目です。

  • 退職給付債務とその積立状況
  • 関連当事者取引、オーナー個人が保有する資産
  • 事業で使用しているがオーナーや資産管理会社が所有する不動産
  • 長年の取引先との書面化されていない商慣行
  • 労働時間管理をはじめとする労務コンプライアンス

資料は日本語のみで提供されるのが通常であり、開示は「聞かれたことに答える」形になりがちです。他市場以上に、精度の高い資料依頼リストの設計が重要になります。

6. 交渉・契約締結・クロージング

日本の意思決定は社内合意の形成を伴います。外から見ると停滞しているように映る時期があり、合意が形成された後に一気に動きます。一方で、いったん固まった条件を終盤で蒸し返すことは強く嫌われ、破談の最大の原因にもなります。契約締結からクロージングまでの間に、必要な当局対応——該当する場合は外為法に基づく届出を含みます——と引継ぎ準備を進めます。

7. クロージング後

日本では、買収後の定着(リテンション)が他市場以上に重要です。従業員も取引先も、最初の数週間の進め方を見て今後を判断します。既存の経営陣を残し、早い段階で丁寧に説明し、初年度は大きく変えない——こうした進め方のほうが、統合を急ぐより良い結果につながる傾向があります。

まず何から始めるか

日本での買収を検討されている場合、最初にすべきことはターゲットリストの作成ではなく、買収条件とその背景にある理由を言語化することです。探索の生産性は、その一枚の資料で決まります。

インサイト一覧へ戻る

日本企業の買収をお考えですか

ご希望の買収条件をお知らせください。日本国内で条件に合致する機会をご提案します。